Archive for the ‘遺産分割’ Category

【コラム】相続人の中に行方不明の人がいた場合

2020-10-17

1、問題の所在

相続人の中に行方不明の人がいた場合、そのままでは遺産分割協議ができません。調停を申し立てても送達できないため、そのままでは調停を開始することができないことになります。では、どうすればよいのでしょうか?

 

2、不在者財産管理人制度

 不在者財産管理人制度は、民法25条に定められた制度で、「従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったとき」に、利害関係人等の請求により管理人が選任される制度です。

 家庭裁判所が選任した不在者財産管理人は、保存行為(民法103条1項)や性質を変えない範囲での改良行為(民法103条2項)以外の行為を家庭裁判所の許可を得て行うことができます(民法28条前段)。それゆえ、遺産分割交渉も家庭裁判所の許可により行うことができます。

3、失踪宣告

 失踪宣告は、不在者の生死が7年間明らかでないときに利害関係人の請求により失踪の宣告がされる(民法30条1項。普通失踪)制度です。また、「戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないとき」にも同様に利害関係人の請求により執行宣告がなされます(民法30条2項)。

 効果としては、普通失踪では、失踪から7年がたった時点で、特別失踪では危難が去った時点で、死亡したとみなされます(民法31条)。

4、不在者財産管理人選任と失踪宣告の違い

 不在者財産管理人選任は、生存しているが財産を管理する人がいないという前提で、財産の管理のために家庭裁判所が行う仕組みです。一方、失踪宣告は、本人の死亡を擬制するものであり、法律上死亡したとして相続が開始します。

 したがって、相続人の1名について不在者財産管理人が選任された場合、不在者財産管理人が本人に代わって遺産分割協議に参加します。

  一方、失踪宣告では行方が分からなかった相続人が死亡したとみなさるため、新たに相続が発生します。したがって、その相続人と交渉する必要が生じます。なお、どの時点で死亡したとみなされるかが普通失踪と特別失踪では違う点に注意が必要です。

 また、不在者財産管理人はあくまで不在である本人のために交渉を行うので、本人に不利な遺産分割に応じることはできないこととされています。一方、失踪宣告により新たに相続人になった者にはそのような制限はありません。

5、まとめ

  不在者財産管理人選任と失踪宣告は行方不明の人がいる場合に遺産分割協議を進めるために用いることができる制度という点では共通しています。しかし、上記のように要件にも効果にも大きな違いがあるので、いずれを申し立てるかは、法律的な観点から十分な検討が必要です。

 また、行方不明と思っていても弁護士による調査で行方が判明する場合もあります。職務上請求により戸籍や住民票の調査が可能であり、それらや、他の相続人に聴取するなどの方法で、所在不明だった相続人と連絡が付くこともあります。ただ、手を尽くしてもなお行方が分からない場合に初めて不在者財産管理人選任や失踪宣告の申し立てを検討するべきです。

 このような調査や検討は一般の方が行うことはそれなりに大変です。そこで、弁護士に相談、依頼することがお勧めです。

【コラム】遺産分割における調停と審判の違い

2020-10-16

1 遺産分割の調停と審判はどうちがうか?

遺産分割について、当事者どうしの交渉で解決できなかった場合には、通常、調停を申し立てます。それでも解決できなければ、審判に移行します。(調停を経ずに審判を申し立てることもできますが、調停に付される可能性が高いです) では、調停と審判はどう違うのでしょうか?

 

2、調停の概要

 調停は、家庭裁判所で行われる話し合いです。調停委員2名が各相続人から順番に話を聞いて、他の相続人に伝えつつ、合意形成を目指します。原則として、調停室には各相続人が順番に入り、同時に入って顔を合わせて話し合うのは例外です。ただし、数名の相続人がいる場合に、おおよそ考えの一致するグループが一つにまとめられることはあります。また、最初の説明の際に全員同席する場合もあり、さらに、成立の際には通常全員同席します。

 調停委員会は裁判官1名と調停員2名で構成されるものの、通常、裁判官は調停に参加しません。開始の時に手続きについて説明するために出席することが多く、また、成立の際には出席して調書を読み上げますが、それ以外には参加しないことがほとんどです。

 調停は、全員が合意すれば成立し、調停調書は債務名義になります(つまり、強制力が生じます)。一方、繰り返し行っても合意に至らない場合には不成立で場合は、終了し、審判に移行します。

なお、調停の管轄は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。

3、審判の概要

審判は家庭裁判所で行われる手続きで、遺産分割について裁判所の判断で解決することを目指す手続きです。すなわち、合意に至らなくても、裁判所が遺産分割について具体的に判断し、その判断は確定すると強制力を持ちます。審判を元に登記を行うこともできれば、債務名義として差し押さえも可能です。なお、審判の中でも合意に至れば、示談が可能で、その場合、調書が作成され、それに基づいて遺産分割を行うことになります。

 審判は、裁判官と両当事者が出席して行われます。通常の裁判に近い進行と言えるでしょう。

なお、審判の管轄は、相続開始地(被相続人の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所です。

4、調停と審判の違い

 以上のように、調停は、「原則同席しない」「合意による解決を目指す」「管轄は相手方住所地の家庭裁判所」であるのに対して、審判は「原則、同席する」「裁判所の判断による解決を目指す」「管轄は被相続人の最後の住民票の所在地の家庭裁判所である」という違いがあります。

 なお、調停ではなく最初から審判を申し立てることも制度上は可能ですが、最初から審判を申し立ててもたいていは調停に付されると考えられます。したがって、交渉→調停→審判という流れが一般的なものとなっています。

【コラム】交渉の段階で弁護士にご依頼いただくメリット

2020-08-30

1、どの時点で弁護士に依頼するか

遺産分割について、相続人の間で話がまとまらない場合、家庭裁判所に審判を申し立てて解決を図ることができます。裁判所の手続きを始める段階で弁護士に依頼するという方もおられますが、交渉の段階でご依頼いただくこともできます。当事務所では、交渉の段階でのご依頼も歓迎いたします。

 

2、交渉の段階でご依頼いただくメリット

相続人の範囲の調査

 遺産分割の交渉には、まず、相続人の範囲の確定が必要です。そのためには戸籍をさかのぼって調査する必要がありますが、弁護士にご依頼いただければ、必要な調査はお任せいただけます。すなわち、弁護士が職務上請求書を使って市町村役場等に請求し、必要な戸籍を集めて、相続人の範囲を確定します。

遺産の調査

遺産の調査に関しては、基本はご本人様から銀行等に問い合わせて頂く形になりますが、名寄帳の調査など、一部調査を弁護士が代行することができます。また、開示された資料から相続財産一覧表を作成する作業は弁護士が行います。

交渉の代行

 他の相続人に手紙を出したり電話をしたりしての交渉を弁護士が行います。したがって、ご本人様は他の相続人とお話しする必要がなくなります。もちろん、弁護士は法的知識に基づいて、法定相続分に基づく相続額を計算し、さらに、案件に応じて、寄与分、特別受益の主張も行い、あるいは相手方からのそれら主張に反論し、ご依頼者様の利益になるように交渉を進めていきます。どの遺産を相続したいか、どこは譲ってもよいか、というような希望ももちろんお聞きして、相手方に対して主張をしていきます。このように、弁護士が法律の専門知識に基づいて他の相続人との交渉を代理人として行い、ご本人様は相手方と交渉する必要がなくなるのが、最大のメリットといえるでしょう。

 合意ができたら、遺産分割協議書を作成します。これを、弁護士が各相続人に送り、署名、押印して頂くことで終了となります。なお、遺産分割協議書をもとに、不動産の相続登記や預貯金などの名義変更を行うことができます。(不動産の名義変更に関しては別途司法書士を紹介させて頂くことができます)

 

3、こういう時はご相談を

 他の相続人から遺産のことで協議したいという手紙が来た、逆に、こちらから交渉をしたいがどうしたらよいかわからない、疎遠な親族がいて相続人に含まれているが自分では話しにくいので代わりにお話ししてほしい、など、遺産分割に関して困っている場合は、まずは弁護士にご相談ください。

 当事務所では、相続の相談は初回1時間までは無料です。お電話か電子メールでご予約の上、立川所沢の当事務所までご来訪をお願いします。

(なお、出張相談ができる場合もあるので、出張相談ご希望の場合は、まずはお問い合わせください)

 

 

 

【コラム】相手方が多い場合の遺産分割交渉

2020-08-10

遺産分割の交渉をする際に、

・長らく交渉しないままにしていた結果孫世代になってしまっている

・兄弟姉妹間の相続である

などの理由で相続人の数が多い場合もあると思います。そのような場合、疎遠な方がいたり、連絡先が分からない方がいることも珍しくありません。

また、連絡先はわかっていてもなんとなく自分から見て話すのが苦手な方がいることもあるでしょう。また、日本各地に相続人が分散して住んでいて、面会での協議が難しい場合もあります。

そのような時、弁護士にご依頼いただければ、代理人として交渉をいたします。

戸籍や住民票などを取り寄せ、それによって相続人を確定し、さらに住所を調べて、郵便を送ること、等により交渉を行います。(いくら探しても所在が分からない場合には、不在者財産管理人や失踪宣告の制度を用いることも考えます)

全相続人の同意を得られれば、遺産分割協議書を作成し、それによって相続(遺産分割)は確定します。その後、株式の名義変更や不動産の登記などが必要になります(不動産の登記は別途司法書士を紹介させていただきます)。

一方、交渉では合意を得られなかった場合は、遺産分割の調停を申し立てます。さらに、調停でもまとまらなかった場合には、遺産分割の審判に移行します。なお、調停が不調の場合の審判への移行は裁判所の判断により行われ、改めて申し立てをする必要はありません。(最初から審判を申し立てることも法律上はできますが、たいていは調停に付されます)

審判では裁判所が遺産分割の内容を決定します。ただ、これに対しては決められた期間内に即時抗告をすることができ、そうすると、高等裁判所において審査がなされます。

高等裁判所の判断に対してなお異議がある場合に最高裁に判断を仰ぐ方法はありますが、これは理由が限定されているので、認められることは稀です。

このように、遺産分割に関しては、理論的には、高等裁判所や最高裁判所まで進むこともあり得ますが、実際のところ、多くの案件は交渉や調停で解決していると考えられます(少なくとも、当事務所での経験上は多くが交渉か調停で解決してます)。

遺産分割は、長く行わないと、相続人の数が増えてしまい交渉が難しくなる恐れもあります。

また、未分割だと不動産や預貯金などが共有状態となり、それら資産の利用や処分にも制約があるままとなってしまい、何かと不便です。

それゆえ、早めに弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

【コラム】遺産の評価の基準時(遺産分割)

2020-05-26

遺産の評価の時点

遺産分割の際に資産はいつの時点を基準に評価するべきでしょうか?
つまり、土地や建物などの不動産は価格が変動します。土地は経済情勢などで値段が上下しますし、建物は基本的に経年とともに価格が下がっていきます。また、株式などの有価証券も同様に価格の変動があります。それゆえ、相続発生から遺産分割までに時間が経っているとその間に不動産や株式などの価値が大きく変わっていることもあります。そのような場合、どの時点を基準に評価するかで、かなり結論に影響が出る可能性があります。

これについては、原則は、遺産分割時点の価値で評価することになっています。
これは、公平を保つためにそのように解されています。考えてみれば、実際に遺産を承継した人が処分できるのは分割後なのですから、長い期間が経っているのに相続発生時の価値で評価されると公正が保てないですよね。それゆえ、実務では遺産分割時点の価値で評価するのを原則としています。

 

評価の方法

 では、遺産分割時を基準として、具体的にどのように価値を判断するのでしょうか? 不動産については、交渉や調停で合意に至る場合は、路線価や、市場価格、などいくつかの評価方法がありますが、評価方法について合意を形成できなければ、家庭裁判所で鑑定を行い、それに基づいて判断がされることになります。未公開株式など、他の争いになる資産についても同様です。鑑定には費用が掛かり、その負担は基本的には鑑定を申し立てた人がすることになっていますが、相続人の合意の上で遺産から出すこともあります。

 いずれのせよ、鑑定には費用が掛かるので、遺産分割の方法に合意ができなくても遺産の評価方法については合意して、それを前提に調停や審判を進めてもらうという場合もあります。

弁護士にご相談を

 遺産の評価は簡単なようで実は難しい問題です。遺産分割が意外な結果になって慌てないように、弁護士にご相談いただければ、と思います。弁護士にご相談いただければ、遺産の評価の問題はもちろん、遺産分割に関する問題全般についてご回答させて頂きます。また、代理人として交渉したり、調停や審判の期日に出席することも可能です。

 当事務所では、相続に関するご相談は1時間まで無料です。お電話または電子メールでご予約の上、立川または所沢の当事務所までご来訪頂ければ、と思います。

【コラム】遺産分割の調停

2020-05-11

交渉がうまくいかない場合は

遺産分割について、話し合いでまとまらない場合、調停を申し立てるのが一般的です。

いきなり審判を申し立てることもできなくもないですが、審判を申し立てても調停に付される可能性が高いので、ほとんどの場合は、まず調停を申し立てます。

遺産分割調停とは

 そもそも、遺産分割調停とは何でしょうか? これは家事事件手続法に定められた調停手続きであり、同法の後ろの別表第2に掲げられていることから、分類としては別表第2調停と呼ばれます。別表第2調停は、審判の対象になりうる争いではあるものの、当事者間の話し合いによる解決が望ましいとの観点で、原則としてまず調停を行なうことになっています。

 遺産分割調停においては、裁判官1名と調停委員2名からなる調停委員会が組織されますが、実際の調停期日は基本的に調停委員2名が担当しており、裁判官は一番最初の説明の時と最後の成立の時以外は、出席することは希です。ただ、調停委員は当事者がいないところで進行について裁判官と打ち合わせを繰り返しています。調停委員は法律の専門家とは限らず、社会の各分野で活躍している人が選ばれています。

期日の進行

 指定された日時に裁判所に行くと、最初の日には裁判官と調停委員、両当事者、全員がそろって、裁判官から手続きについての説明があります。(ただ、この過程は省略されることもあります)

 その後は、調停委員2名と当事者1名、で同じ調停室に入り、まず、当事者は、調停委員に自分の考え方を伝えます。そうして、一通り話が終わると、当事者は待合室に移動します。次に、同じ調停室に別の当事者が呼ばれて、話をします。この際には、最初に話を聞いた当事者の意向も伝えられ、それに対してどう考えるか、というようなことを聞かれる場合もあります。あるいは、まず各当事者の意向を聞いてからそういう段階へ進めようとする場合もあります。当事者が3名以上いる場合は、以上のような手順を繰り返して調停委員は各当事者の意向を把握します。もっとも、3名以上当事者がいても、そのうち2名かそれ以上の当事者が同じ意見だと、同じ意見の当事者からはまとめて考えを聞くというような場合もあります。このような作業の繰り返しで、調停は進んでいきます。

 このように、当事者どうしが顔を合わせずに調停委員を通して話し合いを進めていくのが調停の特徴です。

調停の全体の流れ 

上記のような形での話し合いを期日のたびに行います。また、期日間で主張書面(準備書面)を提出する場合もあります。

期日を重ねていくうちに方向性が見えてくる場合は、調停を続けていき、成立を目指します。一方、最初から意見が完全に対立して一致に至ることが難しそうな場合には、2回か3回で打ち切られて審判に移行する場合もあります。

 

調停の終了

 全当事者が合意に至れば、調停が成立します。その内容は調書に記され、権利や義務の内容は強制力を持ちます。これを基に、登記の変更や口座名義の変更などを行います。

 一方、調停が成立しない場合は、審判に移行します。

 

調停の際に弁護士に依頼するメリット

 調停において弁護士に依頼するメリットはどういうところでしょうか? まず、遺産分割について専門的見地からのアドバイスを受けられるということが挙げられます。調停においては、自分の主張について調停委員に聞かれますが、同時に、その法的な根拠についても問われることがあります。例えば、親の面倒を見ていたから多めに遺産が欲しい、と主張するのであれば、それが民法で定められた寄与分に当たるということ、その額はこれくらいの金額として評価されるべきであること、を根拠を持って主張しないといけません。この際、専門的知識を持った弁護士が事実関係や判例を調査したうえで行う方が適切で説得的な主張をできると思います。

 寄与分に限らず、他の相続人の特別受益を主張する場合や、遺産である土地の評価についての主張を行う場合、など様々な場面で専門的な知識が必要になります。あらかじめ弁護士と打ち合わせることができるのはもちろん、弁護士が準備書面という形で主張を提出することも可能です。

 さらに、調停の際に同席して、ご依頼者様のために主張をすることができます。当事者だけだと調停委員が一定の方向にまとめようとしているときに、自分の内心がそれと違っても強く主張できない、という方もおられます。その点、弁護士はご依頼者様の利益のために、適宜、調停において、発言をします。それによって、調停が不利な方向に進むのを防いで、ご依頼者様の意向に沿った解決ができるように努めます。

 このように、遺産分割調停においては、相続事件に詳しい弁護士を代理人として依頼することには大きなメリットがあります。当事務所も、これまで、遺産分割調停案件を積極的に受けてきました。遺産分割について、悩んでおられる方は、まずはご相談ください。立川または所沢の視点でご相談が可能です。なお、相談料は、初回1時間は無料となっております。

【コラム】相続人の中に行方不明の人がいる場合

2020-04-04

相続人の中に行方不明の人がいる場合、遺産分割はどのようにすればよいでしょうか?
話し合いで決めようとすると、全員の一致が必要なので、一人行方不明の人がいると、解決できないようにも思えます。

しかし、法律上、方法がないわけではありません。

このような場合、2つの方法が考えられます。

一つは失踪宣告です。
これは7年以上行方不明の場合(戦争、船舶の沈没、など危難の場合には1年以上)に、利害関係人の申し立てにより、法律上死亡したとみなす制度で、家庭裁判所に申し立てます。
 これが認めれた場合、死亡したとみなされるわけですから、この方については、新たに相続が起きることになります。

一方、不在者財産管理人という制度があります。
これは、民法上は「従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったとき」および「本人の不在中に管理人の権限が消滅したとき」に選任されることになっています。(25条)

簡単に言えば、不在になり、連絡が取れないような場合に、財産を管理する人を選任するという仕組みであり、利害関係人または検察官が選任の申し立てを行なえます。それゆえ、共同相続人は申し立てることができることになります。

この仕組みは、失踪宣告と異なり、不在者の死亡したとみなすわけではなく、代わりに財産の管理をする人を選ぶ仕組みですので、要件を満たしていれば、比較的短い期間で決定されるのが一般的です。
不在者財産管理人は、裁判所の許可を得て(民法28条)、遺産分割協議に参加することができます。

但し、不在者財産管理人は、不在である本人のために財産を管理するわけですから(善管注意義務)、原則として、本人に不利な遺産分割に同意することはできません。それゆえ、不在者財産管理人制度を用いても、その関係では、柔軟な分割が難しいという問題は残ります。
ただ、話し合いができないという状態を脱することができるというメリットはあります。
上記の手続きは実際に行なおうとすると、それなりに複雑なので、専門家である弁護士に相談して頂ければ、と思います。

【コラム】審判が出たら

2020-04-02

遺産分割の調停が審判に移行し(あるいは最初から審判を申し立ててそのまま審判が進み)、審判が出された場合、どうなるのでしょうか?

まず、後述するように即時抗告という手続きがあり、これを期限内に行えば、まだ確定はしません。
一方、期限内に相続人のだれも即時抗告を行わなかった場合は、確定します。
確定した審判は債務名義になります。債務名義というのは、強制執行に必要なもので、これにより、例えば、不動産の登記などを強制的に行なえることになります。
つまり、審判に対して即時抗告が行なわれずに確定した場合は、当事者が納得していなくても、強制力をもって執行ができるようになるということです。
*ただ、執行は自動的に行われるわけではなく、別途、手続きが必要です。

一方、相続人のうちの誰かが即時抗告をすれば、審判は確定せず、高等裁判所で審理されることになります。
ただし、即時抗告は告知を受けた日から2週間以内にしないといけません。
また、即時抗告は、抗告状を原裁判所(つまり、審判をした家庭裁判所)に提出することで行ないます。高等裁判所に出すわけではないので、注意が必要です。

即時抗告が適法に行われると、高等裁判所で審理がされて、決定が下されることになります。
ただ、家庭裁判所に差し戻される場合もあります。

高等裁判所が決定をした場合には、最高裁判所に、特別抗告や許可抗告をすることができる場合があります。
ただ、特別抗告や許可抗告は理由が限定されているので、実際にはできない場合もあります。
すなわち、特別抗告は憲法違反があることを理由とする場合に限定されていますし(家事事件手続法94条第1項)、許可抗告は最高裁、大審院の判例に反する場合等法令の解釈に関する重要な事項を含む場合に限り高等裁判所の許可を得て抗告する手続きです(家事事件手続法97条)ので、どのような場合でもできるわけではありません。
 また、特別抗告、許可抗告は告知を受けてから5日以内にしないといけません。 特別抗告、許可抗告は、執行停止の効力を有しないことにも注意が必要です(ただ、申立てにより、執行停止がされることはあります)。

実際には、特別抗告、許可抗告により最高裁判所まで進む案件は全体から見れば少数だと考えられます。

このように、審判では、どこかの段階で、確定して、強制力を持った処分が可能になります。
(上記のとおり、特別抗告、許可抗告が行なわれていて確定していない段階でも強制力を持った処分ができる場合もあります)

審判は、このように、当事者が納得しなくても問題を解決できるという点で、効果的ですが、逆に言えば、自分が納得していなくても従わざるを得ないことに なるわけで、審判や、それにつながる調停を申し立てる場合には、法律に当てはめるとどういう結論になりそうなのか、よく検討してから行なう方が良いと思います。

【コラム】調停でもまとまらない場合

2020-03-31

遺産分割についての調停がまとまらない場合は、自動的に審判に移行します。
家事事件審判法に、別表第二事件として、調停が(合意に至らずに)終了した場合は、審判の申立てがあったものとみなす旨、規定されているからです。

この場合、調停が行われてきた家庭裁判所で審判も行われるという扱いが一般的です。

審判は、調停とは異なり、裁判所が遺産分割について決定するための手続きです。
もっとも、審判の中でも話し合いが行われることもありますが、まとまらなければ、裁判所が法律に基づいて決定します。
 審判では、事実関係に法律を適用して分割がなされるのであり(そういう意味では、民事裁判と類似しています)、それゆえ、各当事者は、主張、立証をしっかりとする必要があります。

なお、寄与分を主張したい場合は、必ず、寄与分を定める審判の申立てをしないといけません。これをしないと寄与分を考慮してもらえません。

審判の決定は(即時抗告で変更されない限り)法的な強制力があります。
当事者は、仮に不満があっても、確定した場合は、従わざるを得ません。
なぜなら、審判に基づいて強制執行が可能だからです。

このように、審判により解決は、必ずしも当事者の移行に沿うとは限らず、かつ、最終的なものなので、審判や、それにつながる調停を申し立てる際には、予想される結果を充分検討してから行なうほうが良いと思います。

【コラム】話し合いでまとまらなければ

2020-03-29

相続について、当事者だけでの話し合いでまとまらない場合は、どういう方法があるでしょうか?

この場合、基本的な方法としては、家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てる、ということが考えられます。
もっとも、最初から審判を申し立てることも可能ですが、調停に付される可能性が高いと思います。

さて、では、調停では、何をするのでしょうか?
実は、調停も話し合いです。
ただ、裁判官と調停委員からなる調停委員会が双方の意見を聞いて話し合いを進めるので、一般的に考えれば、当事者だけで話し合うよりまとまる可能性は高くなると思われます。
(実際、当事者だけの話し合いで解決しなかったものが調停で解決することはよくあります。

実際の流れとしては、各回の話し合いは、当事者と調停委員で進められ、裁判官は最後にまとめるとき、など要所でだけ、直接出席するのが一般的です。
(ただ、調停委員は、当事者のいないところで、必要に応じて裁判官と協議しています)

また、調停では、基本的には、各当事者と調停委員、で話し、相手方と同席して話す方式で行われることはまれです。
つまり、申立人と相手方は交互に調停室に入り、顔を合わせないで行なう方式が一般的です。
例えば、申立人が調停委員に話し、調停委員がそれを相手方に伝え、今度は相手方が調停委員に話し、それを調停委員が申立人に伝えて・・ というようなことの繰り返しで話を進めていきます。
もちろん、弁護士にご依頼の場合は、弁護士も出席します。
最後にまとめるときは、全員同席が原則です。

なお、相続人が数人いて、それぞれ立場が違う時は、それぞれの相続人と調停委員、で順番に話をしていくような形になりますが、相続人が数人いても、対立していないグループがある場合は、そのグループについては、一緒に調停室に入るような扱いがされるのが一般的です。

調停委員は中立的な立場で話すことになっていますが、逆に言うと、ご自身に有利な事情は自分で主張する必要があります。
例えば、自分は被相続人の介護に関して貢献した、相手方は先に多額の援助を得ていた、などの事情は調停委員から積極的に聞いてくれることは期待できません。ご自身で主張する必要があります(弁護士が付いている場合は、調停前に弁護士と打ち合わせて伝えておけば、弁護士から話すことが可能です)。

もう一つ、調停に臨むうえで念頭に置いておいた方が良いポイントとしては、調停は法的な白黒をつける場ではない、ということでしょう。つまり、必ずしも法的な根拠がなくても全員で合意できれば、原則として自由に分割割合を決めることができますし、逆に、法的に有利な要素があっても、合意できなければ、成立はしません。
 ただし、希望通りにまとまらない場合は「もし審判になったらどうなるか?」ということも検討したうえで、対応を決める、ということも必要であり、従って、法的な知識をもって臨むことも重要だと思います。
(そもそも、法的にどのような解決が妥当かを念頭に主張を決めたいという方も多いと思います)

ところで、調停の管轄は、原則として、相手方の住所所在地の家庭裁判所です。
そういう意味では、わざわざ遠方まで行かないといけない場合もあるわけですが、ただ、最近の法改正で、遠方の場合は、調停期日の際に電話を用いることができるようになりました。電話で期日を行う場合、弁護士に依頼していれば、弁護士の事務所を用いることになります。(ただし、実際に電話で行うかは裁判所の判断です)

調停は、このように、裁判所で行われるものの、結局のところ、話し合いです。
それゆえ、まとまらない場合もあります。

では、調停を行ってもまとまらなければとうなるのでしょうか?
この点については、次回、解説します。

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