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【コラム】遺言が無効になる場合

2020-05-22

思いの通りの相続を実現したり、将来の紛争を避けるために作成する遺言書。
でも、せっかくの遺言書が無効になってしまうケースもあります。

今日は、どういう場合に無効になってしまうか、あるいは、無効になる可能性があるか、について、お話ししたいと思います。

1、自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言の場合は、形式を満たしていないことが原因で無効になる場合があります。
自筆であること、日付と氏名を自筆で書いていること、押印されていること、などの条件があり、どれか一つでも満たしていないと、無効になってしまいます。*改正法では目録はワープロで作成できるようになりましたが、本文は手書きで書く必要があります。

また、夫婦連名の遺言書を無効とした判例もあります。

また、自筆証書遺言で、もう一つ争われる場合としては、他人による代筆です。
すなわち、自筆証書遺言は文字通り自分で書かないと効力がないのですが、他人が代筆したのではないか、という点が疑われる場合があります。これは、代筆であることが明らかにされると、無効になってしまいます。

また、他の人が手を添えて書いたということで、無効となることがあります。これについては、最高裁判例があり、

昭和62年10月8日最高裁判決は、

(1) 遺言者が証書作成時に自書能力を有し、
(2) 他人の添え手が、単に始筆若しくは改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであり、かつ、
(3) 添え手が右のような態様のものにとどまること、すなわち添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが、筆跡のうえで判定できる場合には、「自書」の要件を充たすものとして、有効である

としています。逆に言えば、手を添えて書かれた場合、これらどれか一つでも満たされない場合は、その遺言は無効になってしまうということです。

また、本人の遺言能力を争われる場合もあります。すなわち、その時点では、認知症などで、すでに遺言を書く能力を失っていた、という主張です。自筆証書遺言の場合、証人もいないし、第三者が介在するわけではないので、このような主張がされやすいと言えます。

このように、自筆証書遺言には、多くの無効原因がありうるので、一般的には、あまりお勧めしません。

 

2、公正証書遺言の場合

 公正証書遺言の場合は、公証人が、本人が口述したものを書く、という方式であり、形式的な要件で無効となることは考えにくいです。
ただ、遺言能力について争われて無効になるリスクは、ないとはいえません。確かに、公証人が口述を受けて作成しているので、自筆証書遺言と比べると、遺言能力について争われるリスクは低いと言えます。しかし、遺言能力の有無は、争われた場合に、最終的に判断するのは裁判所です。公証人に権限があるわけではありません。裁判所は、当事者からの主張、立証を元に、遺言者の当時の医学的な状態などを根拠として判断するので、公証人が形式を満たして作成したからと言って、無効にならないとは言い切れないのです。実際、公正証書遺言が無効になった事例も存在します。
 それゆえ、遺言は、まだしっかりしているうちに作成することが望ましいと言えます。

 

3、まとめ

このように、遺言書はせっかくつくっても、無効になることがあります。
(以上で解説したのは典型的なものであり、無効原因はこれに限るものではありません)

無効とされてしまったり、争われるリスクをできるだけ下げるためには、一般的に考えて、遺言書は、まだしっかりしているうちに、公正証書遺言で作成する、のが良いと言えます。

なお、その後に財産の状況に変動が生じて従来の遺言書では思った通りの相続が実現できないなどの不都合が生じる場合や、考えが変わった場合、には、新たに遺言書を作成することで、内容を変更する(どちらにも無効原因がない場合には、後から作成された方が有効となる)ことができます。

 遺言書を作成したいがどのような内容にして良いかわからない、あるいは、手続きが分からない、という方は、まずは弁護士にご相談ください。当事務所では、相続・遺言の相談は初回1時間無料です。立川、所沢、いずれでもご相談可能なので、まずはお電話か電子メールでご予約の上、ご来訪をお願いします。

 

【コラム】遺言執行者とは?

2020-05-16

遺言執行者とは?

遺言執行者とは、文字通り、遺言を執行する役割を持った人であり、遺言で指定するか、裁判所に申し立てて選任してもらいます。
執行者がいないと相続の内容を実現できないというわけではありませんが、執行者がいると、一般に、相続人の手間を軽減できます。

*遺言で認知をする場合、推定相続人の排除及びその取り消しをする場合は、執行者の選任は必須です。

すなわち、執行者は、不動産の登記や、預貯金の解約、株式の名義移転、など、遺言の内容を実現するために必要な行為をすることができます。執行者がいないと、それらの作業は基本的に相続人がすることになるので、執行者がいることでその手間が省けるというわけです。

一方で、遺言執行者には、資産目録を作成し全相続人に交付する、などの義務もあります。

 

遺言執行者の指定方法

遺言執行者を遺言で指定する場合、相続人の中から選ぶこともできるし、弁護士などの専門家に依頼することもできます。

遺言書に書いていなかった場合には、裁判所に選任の申立てをするという方法で選んでもらうことができます。

 

弁護士を遺言執行者にする場合の注意点

なお、遺言執行者は被相続人の意思を実現するために動く立場であるため、弁護士が遺言執行者となった場合、その弁護士は、相続財産を巡る個別紛争において特定の相続人の代理人になることはできないと解されています。

つまり、実際に相続が生じた後に、例えば、遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)などにより新たな紛争が生じたとき、遺言執行者に指定されている弁護士は、その紛争で、片方の当事者の代理人となることは原則できません。

 つまり、相続人から見れば、遺言作成にかかわった弁護士に、遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)事件についての代理は頼めないことになります。

そう考えると、そのような事態が予想される場合には、敢えて弁護士を執行者に指定しないほうが良いという考え方もあります。
この辺は、個別の案件によりますので、遺言作成について弁護士に相談する際に、この点もよく相談することをお勧めします。

なお、弁護士に遺言執行者を依頼すると、弁護士報酬は遺産の中から支払う仕組みにするのが一般的です。

【コラム】遺言を書くメリット

2020-05-14

 遺言を書く方が増えている、と言われています。
では、遺言を書くメリットはどこにあるのでしょうか?
大まかにいうと、

1、誰に資産を残したいかという思いをかなえられること
2、相続人どうしでのもめ事を防ぐことができること
3、節税を考えた遺産分割ができる場合があること

が挙げられます。

1、については、適切な遺言書を作れば、例えば、住んでいる家(建物と土地)は長男に相続させたいとか、経営している会社の株式は二男に相続させたいとか、預貯金は長女に相続させたい、とか、そういった希望をかなえることができます。
 ただし、遺留分という制度があり、その範囲では、思い通りにはできない可能性があります。遺留分は、無視して遺言をすることも可能ですが、侵害された相続人から遺留分減殺請求(改正法では遺留分侵害額請求)がされれば、請求された相続人が具体的に何を渡すかということで、揉めることになりかねません。
それゆえ、揉めたくない場合は、各相続人が遺留分を確保できるような内容にしたほうが良いといえます。(ただ、遺産総額が変動すれば遺留分の額も変わるので、ちょうど遺留分の額だけを渡す遺言というのも、個別に遺産を指定する方式だと、なかなか難しい面はあります)
 もっとも、遺留分は時効または除斥期間までに減殺請求(侵害額請求)されなければ、そのまま遺言による指定に従った分割が確定するので、場合によっては、考慮せずに作成するということも考えられます。予め遺留分の放棄をしてもらえれば安心ですが、これは推定相続人から家庭裁判所への申し立てが必要になるため、なかなか簡単ではないケースが多いでしょう。

2、については、仮に相続人どうしが揉めてしまうと、相続人にとって精神的に負担になるというデメリットがあります。
親族間での対立は、これまでからの不満が表に出てきて感情的な対立となりなかなか解決できない、という場合もあります。

さらに、遺産分割が行われるまでの間、不動産などの資産の処分等が制約されるなどによる経済的デメリットも考えなくてはいけません。
すなわち、共有のままだと不動産を売るには全員の同意が必要ですし、その他の法律行為にも全員の同意が必要な場合や、持分の過半数の同意が必要な場合があり、速やかに処分等ができないことで経済的に損失になりかねません。例えば、固定資産税などの負担はかかる一方で、機敏に売却や賃貸借などの法律行為を行なえば得られるはずだった利益を得られない、といった事態が考えられます。
 遺言により速やかに遺産分割を終わらせることで、そのような不利益を回避することができることもメリットと言えます。
 
3、については、典型的には、小規模宅地等の特例の問題が考えられます。
小規模宅地等の特例は、対象となる土地の評価額を最大80%減額するため、結果として、節税になりうるもので、特に、都市部の地価の高い場所では大きな節税効果を生む場合があります。したがって、そのような場合には、適用できるかどうかは重要です。
 適用のためには、いくつか条件がありますが、それを満たす形での遺産分割を指定するということで税負担を軽くすることが考えられます。
ただし、この特例の適用には、相続人側の条件もありますので、適用を目指す場合は、それも満たす形で早めに準備を進める必要があります。

以上のように、遺言を書くことで、遺産を原則としてご自身の思いに沿った処分(相続、遺贈)をすることができ、また、争いを防ぐことで相続人の精神的負担を軽減、また、場合によっては経済的な損失を防いだり、税負担を軽減できる、というメリットがあります。

なお、以上は一般論であり、すべてのケースでこのようなメリットがあるわけではないし、逆に、これ以外にもメリットがある場合もあり得ます。

なお、遺言を書くことで十分なメリットを得るためには、遺言の内容は適切なものである必要があり、また、有効な遺言であることが前提です。
どのような遺言を書いたら良いかわからないという場合は、まずは、法律の専門家である弁護士にご相談ください。

【コラム】遺言があっても揉めることがある?

2020-04-05

遺言を書いておくと、揉めなくて済むと言われます。
ただ、実のところ、遺言を書いておいても、揉める場合もあります。
それゆえ、遺言を書くと揉めるリスクが下がる、というのが正しいと言えるでしょう。

では、遺言があっても揉めるのはどういうケースでしょうか?
まず、遺言そのものの有効性が争われる場合があります。
自筆証書遺言だと要件を欠く場合が挙げられます。これは、遺言が要式行為である以上、要式を欠くとされると、無効とされてしまいます。ただ、微妙な場合があり、多くの判例が積み重ねられてきています。
 自筆証書だと、本当に本人が書いたのか、という点で争われることもあります。典型的には、「遺言で有利になる相続人やその家族が被相続人を装って書いた」という主張が他の相続人からされることがあるわけです。
このような場合、遺言無効確認訴訟という訴訟が起こされることがありますが、立証する責任は争う側にある(つまり、真偽不明だと請求棄却になる)とされています。

公正証書遺言だと、公証人がかかわるため、要件を欠くとされる事態は考えにくいですが、しかし、遺言者の遺言能力の点を争われることはあります。つまり、認知症などですでに遺言を出来る状態ではなかったので無効であるという主張がされることがあるわけです。

また、遺言が有効とされた場合でも、特定の相続人の遺留分を侵害する内容の遺言書が作成された場合、侵害された相続人から遺留分侵害額請求(旧遺留分減殺請求)がなされて、金額等を巡って揉める可能性があります。

このように、遺言をすれば確実に争いを防げるとまでは言えません。
ただ、そうはいっても、早いうち(元気なうち)に、公正証書遺言を作成しておけば、一般的に考えると、無効とされるリスクはかなり低いと考えられます。

それゆえ、やはり、遺言をすることには意味があると思います。

【コラム】遺言を書く文化

2020-03-23

かつては、日本人は遺言を書かない傾向があると言われました。
戦前の民法では長子相続でしたし、戦後も長らく、意識としては、「長男が家を継ぐ」という考え方が残っていたため、あまり争いが起きなかったためだと思われます。

しかし、今は、兄弟姉妹間の平等意識が高まり、それぞれが権利を主張するケースが増えてきたため、遺言がないと揉めるケースも増えてきたようです。

そういった情勢がよく知られるようになってきたためか、最近は遺言を書かれる方が増えてきています。
例えば、「日本公証人連合会」のサイトによると、平成17年に公正証書遺言を作成した方は約7万人だったのに対し、平成26年には、約10万4000人に増えています。しかも、この間、平成23年に少しだけ減ったほかは、一貫して増え続けています。

そういう意味では、遺言を書く文化が日本にも定着してきた、といえるでしょう。

【コラム】子供がいない場合に遺言書を書くべき理由

2020-02-22

子供がいない場合、自分が死ねば財産は当然に配偶者に行くと思って遺言を書いていない方は珍しくありません。

しかし、法律はそれほど単純ではありません。もし、本人が死亡して、親も子もいない場合、配偶者は遺産の4分の3を相続できますが、残り4分の1は兄弟姉妹が相続することになります。もっとも、これは法定相続分の話であり、合意をすれば変更できます。また、寄与分や特別受益の主張により変更される場合もありえます。しかし、少なくとも、基本的な法定相続分は配偶者に4分の3、兄弟姉妹に4分の1、ですから、配偶者が自動的にすべてをもらうというわけではありません。

そうすると、場合によっては、普段付き合いもないような被相続人の兄弟姉妹が遺産の4分の1を相続することになってしまい、本人も配偶者も予想していなかったであろう事態となりかねません。これは、あらかじめ遺言書を書いておくことで防ぐことができます。兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言書で配偶者にすべての遺産を相続させることを定めておけば、確定的に配偶者がすべての遺産を相続することができます。

 もし、たとえ4分の1であれ兄弟姉妹が相続するとすると、配偶者から見ればその分遺産が目減りするだけではなく、被相続人名義の預貯金の引き出しに面倒な手続きが必要であったり(そもそも遺産分割を行わないと新法でも一部しか引き出せない)、不自由が生じかねません。それゆえ、遺産のすべてを配偶者に相続させる旨遺言書で定めておくことが重要です。

 このように、子供がいない場合でも兄弟姉妹がいるのであれば、死後に生じうる揉め事や不自由を避けるためには遺言書を書いておくことが望ましいといえます。

なお、遺言書は、作成の際のミスを防げることや紛失のリスクを防げることなどを考えると、公正証書遺言が良いでしょう。

当事務所でも遺言作成に関する相談を受け付けていますので、まずはご相談いただければ、と思います。

 

【コラム】公正証書遺言作成の手順

2020-02-08

公正証書遺言作成を弁護士に依頼する場合の手順についてご説明します。

1、相談予約(メールまたは電話)

2、来訪して相談

3、委任契約書等に署名、押印

4、必要な資料を収集し、相続関係や遺産についての調査を行う

5、弁護士が内容の案を作成してご依頼者様に確認していただく

6、ご依頼者様の了承が得られたら、弁護士は公証人と文面について打ち合わせ

7、再度ご依頼者様と協議、最終的な文面を確定して公証人に連絡

8、公証役場で手続き

となります。

(一般的な流れです)

なお、8公証役場での手続き、は必ずご本人様が出席し、公証人との間で内容の確認作業を行います。また、立会人2名が必要です。立会に関しては、弁護士にご依頼の場合は、弁護士や法律事務所の事務員が行うのが一般的だと思います(弁護士や事務員は守秘義務を負うため、外部に内容が知られる心配はありません)。

公正証書遺言であれ自筆証書遺言であれ、法律上は弁護士に依頼しないでも作成することはできます。しかし、トラブルを防ぐために作成するものですので、内容をあらかじめ弁護士に精査してもらうほうが、将来的なトラブルの可能性を下げることができると考えられます。また、地主や大家さんなど不動産をお持ちの方の場合は、それらの管理に関するトラブルも含めてついでに弁護士に相談することもできます。

 遺言書作成を考えておられる方は、まずは弁護士にご相談ください。

【コラム】公正証書遺言をお勧めする理由

2020-02-05

まず、なぜ遺言書を書いた方が良いのでしょうか?

もし、遺言書がないと複数の相続人がいる場合、遺産分割を巡って対立が生じる恐れがあります。そうすると、時には数年かそれ以上の期間がかかり、相続人は交渉やら調停やら時には審判やら、で労力と場合によっては費用をかけないといけなくなってしまいます。そこで、遺言書を書いておけば、紛争が起きる確率を下げることができます。

 ここで自筆証書遺言でも良いと思われるかもしれませんが、たしかに、自筆証書遺言も正しく書かれていれば効力は同じです。しかし、自筆証書遺言には

1、形式が間違えていると無効になってしまう

2、真正に成立したものか争われるリスクが比較的高い

という問題があります。

1ですが、自筆証書遺言の作成は民法上の要式行為であるため、形式が満たされていないと無効になってしまいます。そして、民法には自筆証書遺言を書くにあたっての有効になる要件が多数定められているため、よほど気を付けて書かないと無効になるリスクがあります。

また、2、ですが、例えば、書いた時点で認知症で遺言能力がなかった、とか、別人が書いた、など、もめごとが起きやすいのです。遺言が無効であると考える相続人は、遺言無効確認訴訟という方法で争えるのですが、せっかく遺言書を作成したのに相続人間でそういう争いが起きてしまうのは残念ですよね。

その点、公正証書遺言では本人が書いたことを疑われるリスクはほとんどないでしょう。もっとも、認知症に伴う遺言能力の問題は公正証書遺言でも完全に排除できるわけではないですが、リスクは比較的低いといえます。さらに、自筆証書遺言だと紛失のリスクもありますが、公正証書遺言だとそれは考えにくいです。

そこで、公正証書遺言での遺言書の作成をお勧めします。

公正証書遺言を書く場合、どのように書いてよいかわからない場合や、弁護士(または弁護士法人)に遺言執行者を頼みたい場合には、弁護士にご相談ください。

当事務所では、遺言の相談は初回1時間まで無料です。

【コラム】遺言執行者と利益相反

2020-02-02

遺言を弁護士に依頼して作成する場合に、弁護士を遺言執行者にすることがよくあります。

遺言執行者を指定しておけば、預貯金の分割や登記の変更がスムーズに進むことが期待されるため、遺言執行者を指定しておくことは望ましいことであり、また、法律の専門家である弁護士を指定するのは自然です。もし、執行者を指定しておかないと、執行者が必要になった時に新たに家庭裁判所に選任申立てをしないといけないので、遺言書で指定しておくことは手間を省くためにも合理的だと思います。

 ただし、気を付けないといけないのは利益相反の問題です。すなわち、遺言書があったとしても相続人間の衝突を完全に防ぐことができるとは限らないのですが(例えば、遺留分減殺請求が行われる場合)、遺言執行者はすべての相続人の共通の利益のために業務を行うことが求められているため、相続人の一人のために代理人になることは利益相反になると考えられています。したがって、弁護士が遺言執行者になると、相続人の一人から他の相続人とのトラブルの解決のために代理人に選任したいといわれても応じることはできません。これについては、仮に遺言執行者になった弁護士が途中で辞任した場合や、執行が終わった後も同様だという見解が有力です。

 そうすると、遺言者がある特定の相続人に遺産の大部分を相続させる遺言をしたとして、その遺言執行者に指定された弁護士は、その相続人から他の相続人との問題について相談を受けても応じられないと考えられます。例えば、事業家が自身の資産の大半を長男に相続させる内容の遺言を書いた場合で、顧問弁護士を遺言執行者に指定したとします。その事業家ご自身はもし長男が他の相続人と揉めても自分の顧問弁護士が今度は長男から依頼を受けて対処してくれるだろうと期待しているかもしれません。でも、この場合、当該顧問弁護士は遺言執行者であるがゆえにその相続に関する紛争に限っては、上記長男の依頼は受けられないと考えられます。

 遺言執行者と利益相反の問題は議論があるところではありますが、このような問題も起きうるので、例えば、弁護士ではなく相続人の一人を遺言執行者にして置き、弁護士は相続人の一人の代理人になれるようにしておく、という方法も考えられます。

 このような問題が生じにくいケースでは、弁護士を遺言執行者に指定しておけば、相続発生後に速やかに手続きが終わるという面でメリットがありますが、相続人間のトラブルが予想される場合には上記のような問題もあります。

 

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